新建築2019年5月号を読みました。
今月の新建築、塚本さんの特集記事良いなぁ
— 渡邉 明弘 Aki-Watanabe (@Akkun_Nabechan) 2019年4月29日
地域の建築を作ろうとする事が、
・地域とはどこを指すのか
・地域を構成するのは誰なのか
といった事を考える行為なのだなぁと思わされたり
今回の内容はこんな感じです。
- はじめに
- 日立市新庁舎 妹島和世+西沢立衛/SANAA
- 日本女子大学 図書館 妹島和世建築設計事務所・清水建設設計共同企業体
- ダイヤゲート池袋川島克也+岡田耕治+伊藤佐恵/日建設計
- 清春芸術村ゲストハウス 新素材研究所
- 特集記事:「地域の建築」は設計できるか 塚本由晴
- 尾道駅 アトリエ・ワン(デザイン監修) 西日本旅客鉄道 ジェイアール西日本コンサルタンツ
- 五ケ山クロス ベース 平瀬有人+平瀬祐子/yHa architects
- 多賀町中央公民館 多賀結いの森大西麻貴+百田有希/o+h
- やま仙/Yamasen Japanese Restaurant小林一行+樫村芙実/TERRAIN architects
- 菊鹿ワイナリー6次産業化連携推進施設 AIRA RIDGE 井手健一郎/リズムデザイン+高木冨士川計画事務所
- 軽井沢町農作物等直売施設 軽井沢発地市庭 宮本忠長建築設計事務所
- 当麻町役場山下設計 柴滝建築設計事務所
- 鷹栖地区住民センターアトリエブンク
- 東川町複合交流施設 せんとぴゅあII小篠隆生+ブンク・アイエイ・KITABA特定建築設計共同企業体
- ここに書けなかった作品
はじめに
SANAAと妹島事務所の2作から始まるあたりに編集の意図を感じるなーというのが率直な第一印象だった。1人が設計した複数の作品を載せる場合、そう扱う以外にないだろうという気もする。
日立市新庁舎 妹島和世+西沢立衛/SANAA
広場の上に架けられた軽快でリズミカルな屋根に目を引かれる。市庁舎へ向かう方向性が付与されつつおおらかな空間が出来上がっており、特定の目的がなくてもふらっと立ち寄りたくなるような空間になっていそうである。素材は厚さ6ミリの鉄板であり、10メートルというスパンを確保しながらも軽快さの獲得とたわみの防止の狭間で格闘されたことだろう。
日本女子大学 図書館
妹島和世建築設計事務所・清水建設設計共同企業体
図書館といえば、蔵書収容と机の配置やレファレンス機能の効率性だけが追求されがちなビルディング・タイプで、出来上がった空間はじっと座って書籍に向かうだけの場所を生み出してしまいがちのように思われる。
この作品では、矩形の建物の中央にほぼ全ての機能を配置し、その周囲をスロープがぐるっと回遊しながら各階を繋ぐという立体的な図式が採用されている。このことによりさまざまな光や景色が生まれつつ、自分がどこにいるかも直感的に分かる状態がつくりだされている。スラブどうしのズレも視界や光の通り道になっており効果的である。
ダイヤゲート池袋
川島克也+岡田耕治+伊藤佐恵/日建設計
斜め格子という同じモチーフを採用しながら、低層階と中上層階の対比が印象的である。低層階は鉄道の駅舎と交錯することもあり土木的なスケールで荒々しいV字型の躯体が建物を支持する。免震層により構造的にも意匠的にも縁が切られた上に華奢な鉄骨造のフレームが乗せられている。これは意匠上の対比はもちろん、建物の自重を小さくすることで免震層や低層階にかかる地震力を小さくするという工学的にも合理的な判断がなされている。
清春芸術村ゲストハウス
新素材研究所
庭の石や草木を愛でるように、建物も素材が本来備えている心地よさを引き出す工夫が素材の選定、寸法調整、ディテールなどに見られる。
特集記事:「地域の建築」は設計できるか
塚本由晴
今月の新建築、塚本さんの特集記事良いなぁ
— 渡邉 明弘 Aki-Watanabe (@Akkun_Nabechan) 2019年4月29日
地域の建築を作ろうとする事が、
・地域とはどこを指すのか
・地域を構成するのは誰なのか
といった事を考える行為なのだなぁと思わされたり
尾道駅
アトリエ・ワン(デザイン監修) 西日本旅客鉄道 ジェイアール西日本コンサルタンツ
五ケ山クロス ベース
平瀬有人+平瀬祐子/yHa architects
地域の建築という特集は必然的に地方(田舎)の作品が多く掲載されることに繋がり、またその結果として今回は屋根の検討に力点が置かれている作品が多い印象を受けた。その中でこの作品はキメ写真に床が取り上げられている希有なものである。
多賀町中央公民館 多賀結いの森
大西麻貴+百田有希/o+h
住宅スケールの小さなヴォリュームに分散されることで木密地のような様相を呈している。片流れの屋根が様々な方向に向けられることでその特質がより一層強調されるとともに、随所にハイサイドライトが設けられている。これらに加えて雁行配置により生じた様々な庭や外部との関係性、回遊性のあるプランは地元の民家が参照されているとのことである。
魅力的な建物であることに間違いはないが、プロポーション、素材、レベル、スケール感などはもう少し変化を持たせても良いように思われた。
やま仙/Yamasen Japanese Restaurant
小林一行+樫村芙実/TERRAIN architects
工場や倉庫のようなスケールを持つ印象的な架構であるが、ほぼ人力で施工されている。現地の人間によるセルフビルドを可能にしているのはローテクによる接合部の計画である。
菊鹿ワイナリー6次産業化連携推進施設 AIRA RIDGE
井手健一郎/リズムデザイン+高木冨士川計画事務所
こちらも同様にローテクの在来工法で端正な架構がつくられている。屋根梁以外の躯体メンバーが統一されて軽快なリズムが生まれている。屋根の高さや形状はその結果として導かれたものであるそうだ。結果的に周囲の山並みとも調和しているように思われる。
構造的な検討により生じた屋根の形状が結果的に周囲の山並みと調和しているという点や、草木と対比的なサーモンピンクの色使いなど【すばる保育園】と共通するものがあるように思われる。
参考:2018年6月号168頁──すばる保育園──藤村龍至/RFA+林田俊二/CFA | 2018年 | 新建築データベースβ
軽井沢町農作物等直売施設 軽井沢発地市庭
宮本忠長建築設計事務所
こちらは地域性に配慮して木造と勾配屋根を前提としつつも、無柱の大空間を確保するためにRCの耐震壁で木造トラス架構を支持する計画が採られている。結果的には上作に比べてタフな印象となっている。
屋根形状を周囲の山並みに調和させるのは上作と共通。
当麻町役場
山下設計 柴滝建築設計事務所
こちらも木造の軸組が印象的である。執務エリアでは無柱空間を諦める代わりに在来工法での施工が可能となり、地場の工務店でも施工できそうな設計が木材の地産地消を可能にしている。
鷹栖地区住民センター
アトリエブンク
木造の在来工法で大きな空間を確保するために様々な架構の検討がなされているが、それがあまり空間に影響していなそうな点がもったない。
東川町複合交流施設 せんとぴゅあII
小篠隆生+ブンク・アイエイ・KITABA特定建築設計共同企業体
複合化された公共施設であることから様々な人が出会う建物をつくることが意図されている。これには「プログラムを出来る限り細分化してそれらの接触面積を最大化する」という方法が過去にOMAによって提案されているが、この作品ではワンルームという戦略が採られている。その戦略がプログラムの融合を生み出すのか見てみたいところ。
ここに書けなかった作品
時間の関係でアウトプットまで至らなかった作品たち。後日アップするかもです。
COCONOアートプレイス
中西ひろむ建築設計事務所
輪島KABULET
五井建築研究所
分割造替 金峯神社 —里の拝殿 森の本殿 遥かなる聖山—
渡辺菊眞+D環境造形システム研究所
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それでは今日はこの辺で。