建築再生日記

建築を見たり読んだり聞いたりして、考えたことを記録するメモ帳

住宅特集2019年11月号

住宅特集2019年11月号を読みました。

今月号は開かれる軒と窓という特集です。

定期的に特集されるテーマでもあり作品に取り入れやすいのか、18作品と多い。

 

 

作品18題

東京の住宅_畝森泰行建築設計事務所

表紙にして1作目。外装と言いスケール・形状と言い、コンテナを積み上げたような雰囲気をまとっている。

内部は無柱空間とするために縦横に梁と根太が飛び交いそれらが露出されている。仕上げは壁ごとに変えられている。作者によると建物と建物の間のような空間が指向されているとのこと。言われてみればそんなようにも見える。窓の先に見えるものはこの建物の外壁なのか隣地の建物なのかが曖昧になっている。

論考は「不確かさをかたちにする」と名づけられているが不確かさがどう形になっているかはよく分からなかった。明確な与件のない問い。状況はプロセスプランニングの頃と変わってないのかも知れない。

 

 

風棲家_T-Square Design Associates

木質ルーバーとキャンチテラスの建築。エアコンを使わない家。

屋内が暗く屋外が明るいのは伝統建築物っぽさを感じる。

ルーバーはどんなディテールになっていて、どれくらいの頻度で開閉するのだろう?

 


間∧屋_前田圭介/UID

この人は拠点が西日本という事もあって敷地に余裕のある仕事が比較的多い印象がある。広い敷地の内で形式性の強い解法をもってうまく内外を接続させる印象がある。

この作品もそのひとつ。半地下と片流れ屋根の組み合わせ。屋根の勾配はどれもほとんど同じようだしプランは中庭を囲む中心性の強い形式で、以外と静的というかもう少し変化が付けられたのではないかとも思う。開口から切り取られる景色や取り込む光にも変化があるようにも見えない。


荻窪の家_堀部安嗣建築設計事務所

毎度お馴染みの堀部さんだが、今回の特集の中で彼が取った策は木製ルーバーという、割と常套手段によるもの。

とはいえただルーバーを付けただけではなくて、スケールによる開放度の調整、太陽熱を蓄熱することによる省エネ化、多様な空間のストレスなく繋ぐ動線計画など、単に開くー閉じるのみにとどまらない総合的な快適性が追求されている。

 

つくばのベーシックハウス_堀部安嗣建築設計事務所

窓は大きい方が良いと考える施主は多いけれど、開口の大きさは断熱性能、遮音性能、プライバシーの確保など色々な性能とトレードオフの関係になる。この作品では開口部が大きく稼働率の高い1階と開口部が小さく稼働率の小さい2階で断熱の方法を変えている。現代の技術を使った部分と伝統的な知恵の同居が試みられている。


神奈川の家_谷尻誠・吉田愛/SUPPOSE DESIGN OFFICE なわけんジム

ロの字状のリングを積層させるという、形式性の強い作品。形式性の強い作品性という10年くらい前に流行った方向は、学生時代にその時代を過ごしたスタッフの提案か。

 

おおたかの森の家_八島正年+八島夕子/八島建築設計事務所

大量の蔵書の収蔵と野鳥の観察ができることが望まれた作品。大開口のリビングと開口を減らして書棚を確保する空間。開口だけでなくまわりの環境を含めた作品であること。芸大卒業の住宅作家系統か。P76左下写真の開口は良い。

 

西七区の家_野田大策/ARTBOX建築工房一級建築士事務所

これも同じく環境ありきの解放性。

 

千駄木の住宅_大島彩/大島アトリエ

不整形の敷地が持つ斜めの軸を取り込んで感覚の往来を生活に取り込んでいる。各階の構造を変えていることがよく効いている。こうした2項対立を取り込むことや、手すりの感じなどが青木淳っぽい。

 

H/R/B_間田真矢+間田央/MAMM DESIGN

傾斜地に水平なグランドラインを浮かべて、ドッグランにした住宅。周りを囲まれた旗竿敷地での明るさを追求しているが、他の作品のように仕上げとかの変化があった方がより良くなるのではないか。

 

下馬の住宅_谷口景一朗+望月蓉平+加瀬美和子

住宅地におけるカーテンの要らない開口は自分もテーマにしたことで共感する。開口がその向こうにある室種や用途を想像させるという指摘はなるほどと思った。特集上小さく扱われているが全体の構造計画の方もポイントなのかなと思う。

 

土屋の家_長坂大/Méga

素材や屋根勾配、単純な形状のせいか、簡素な雰囲気がする作品だと思ったが案の定、説明文を読むと山小屋のイメージを持っているという。簡素だからこそ自然との距離感が縮まる家。

鉄の鎧で身を固めるより身軽で動きやすい状態を好む侍のような感覚か。今日流浪人剣心読んだから思っただけだけど....。

 

箱根西麓の家_山田誠一建築設計事務所

立面は5寸勾配の屋根が、平面は短尺状の2分割+付属部分とも3分割とも取れる方向性が印象的。それらは実現するためのLVLの屋根型ラーメンを連続させた架構をわざわざつくっているのは、この地域に吹く風を取り込むためとのこと。局所的な文脈が乏しくなりがちな新興住宅地において広域的な文脈である風土を手がかりとした作品。

                 

m house/魚沼の家_東海林健建築設計事務所

新潟の豪雪地帯だが地面と近い生活を追求している。が、冬には2〜3mもの積雪がある地域で、1階に大きな掃き出し窓を使えるのだろうか。写真を見ると周りの建物は例外なく1階はRC造で玄関は2階となっている住宅もある。こういう地域は冬にこそ竣工写真を撮るべきではないのだろうか。初夏の快適な時期の写真なんて他の地域でも撮れるだろうに。

 

堰の家_斉藤智士/建築設計事務所SAI工房 

 

門川の家_江藤健太アトリエ 

 

多様性が佇む大屋根_手島浩之/都市建築設計集団/UAPP

 

阿品の家_藤本寿徳建築設計事務所

 

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それでは今日はこの辺で。