建築再生日記

建築を見たり読んだり聞いたりして、考えたことを記録するメモ帳

住宅特集2020年2月号 木の家の歓び

 木造特集ということで、おおよその傾向として①構造的な工夫、②敷地・周辺環境や地域性への反応、③自主施工の可能性の検討の3点が印象的だった。多くの作品はこれらのうち複数の傾向を両立させようとしていたように思われる。

 森本邸ハウスメーカーの木質パネルによるボックスと大工による有機的な下屋が特徴的であるが、木造でもこのような透明性が獲得できるのかと思った。3面接道という敷地条件と構造の使い分けが上手くいっていると思う。

 構造的には2階建ての家に目が行った。ミースの無柱空間、ユニバーサルスペースを木造で作ったという事みたいだが、鉄骨造で梁を架けてもよかったのではないか。木造の方が安いのかな。梁型や躯体と縁を切った収納を利用した緩やかな仕切りは有効だと思う。二間×七間の間はメインのヴォリュームから水回りと玄関が飛び出している平面や象徴的な大黒柱が、白の家を思わせる。八度の家は、LVLの存在感をもっと出すか無くした方が良いと思う。その点ではhouseSY/寄木壁の家の方が上手く行っている気がする。H/hは大きな屋根が架けられる事で屋外のような開放性のある部屋ができている。

 敷地条件に反応した作品としては琴似の街家は中層と見間違える不思議なプロポーションをしている。ファサードに透明感を持たせる為にセットバックさせた小断面のブレースで耐力を確保しているからか。インテリアでは身体ともなじむスケールの寸法だと思う。オセロハウスは、角地から90°に開く開放性が心地よい。基壇の上に乗る構成も良い。飛騨古川雪またじの屋根はその名が示すとおり雪への対応が主題なのだから、雪の積もった様子をもっと見てみたかった。雪国の住宅ではいつも思うのだけれど。飛鳥の大中小架構を手掛けた吉村さんは奈良に拠点を構える人で継続的に古民家の改修に携わっている。必然的に地域にアーカイブされた蓄積を紐解く作業が中心となるから、事後的に大きなシステムの外に出ることになったんだろう。とは言え近代以前の生産システムは現代のそれとは違うのでそのまま使うというよりも、現代でできる地域固有のシステムをつくり、それが全国的なシステムよりも良いものである必要がある。林業、プレカット、施工まで一連のシステムとして長期的に成り立つ必要がある。が、変化が早い現代では長期間かけて回収する想定の投資がし難いのが実情で、今すぐ手に入るリソースの上手な活用が模索される必要がありそう。そういった意味では長崎板倉の家は気持ちがいいが、伝統的な構法の採用がある種の趣味ではなくどのような合理性を持つかまで述べられると非常に説得力が増すと思う。Nu-ki Houseは高知特有の材と技術、それらを活用して実現した事を説明して欲しかった。hara house/中之島の家はp093の写真に見えるビニールハウスと住宅の中間くらいの軽やかさが印象的。最大6本の部材を1点で交わり金物で収めるのは多少怖い気もする。2×ハウスはツーバイ材を使って細長い敷地に対応しようとしている。飛鳥の大中小架構や長崎板倉の家が地域固有のリソースを使い、hara house/中之島の家2×ハウスは一般的なリソースを使って地域性を出そうとしている。

 自主施工を取り入れている作品がいくつかあり、木造にはつくることに施主が深く関わる事が出来る可能性を感じた。中でもTIMBERの宿は線対象で大きなスケールの架構に施工まで考えたディテールが宿り、空間の強度と自主施工に対する寛容さを両立している。その上で至る所にオフグリッドの生活を目指す工夫がなされている。自主施工という点で共通する木の船は等身大で爽やかな感じにとても好感を持った。コスト270万はすごい。。。