建築再生日記

建築を見たり読んだり聞いたりして、考えたことを記録するメモ帳

住宅特集2004号 敷地の力を引き出す

敷地の力を引き出すというよりは条件の悪い中でいかに工夫するか、といった作品が多かったように思う。

 

マンハッタンのペントハウスは若い頃に打ち出したコンセプトが生涯を通して追い求めるものになるのだということを感じさせられた。最上階であるはずなのに地下室のようにしんとした12階や、何の機能も当て嵌められていない増築ペントハウスが特徴的。マンハッタンに住み付くことの意思の強さを感じる。

相模原の家はモノや要素がバラバラに存在して存在して屋内外や敷地内外という境界が曖昧になっている。オープンハウスにも行かせて頂いたけど、空との一体感は素晴らしかった。周囲の雑多さを自分自身にも反映させているわけだが、混在させるモノの単位はどう決定しているのだろう。

斜面地の作品が多い。5つの小さな擁壁はコスト的に造成と躯体でお金が尽きたというのが実情なのかも知れない。でも、下階のひんやりした感じと上階の日だまりの感じはだいぶ違った環境になっていそうだし、がっしりとした擁壁と軽快な軸組の対比も面白い。はこは崖地にはこを階段状に積層させる。南光台東は地形に加えて元々の地盤も考慮しているが、ものすごく頑張って擁壁側にバルコニーを作っているのにメインの建物には吹き抜けがだだっ広く残っている意図を知りたい。世田谷の住処は擁壁で挟まれている感じが都会らしい。船岡山の家は傾斜に沿ったスキップフロアの平面を、雁行させて傾斜の先にある山並みへの眺望も取り込もうとしている。

ペリスコープ・ハウスは都内の郊外の作品。第一世代の子供が比較的余裕のある敷地に立つ母屋をどう引き継ぐか。我々世代には共通の問題だろう。離れは資産にリダンダシーを持たせている気がする。アトリエ・ワン出身の玉井さん+野地さんによる角地の浮き出窓は同様に第二世代の住宅を扱っている。木造で無柱ピロティをつくるためにトラス梁を出窓・ペリメーターとしてデザインしている。

ビルタニマノイエは四周をビルに囲まれる中に建っていた2軒の住宅を3階建ての矩形ヴォリュームにして間をガラスにしているイメージ。他の旗竿地としては椿庵はメインのアプローチに面して躙口を配置している。道路から見える下屋の感じも親しみやすいが、外壁の色を椿色にするのはちょっとストレートか。

細工谷のY邸は極小敷地で最大限の床面積を確保するためのトップダウン的な手続きと、部分的な要望に応えるためのボトムアップ的な手続きが混在している。同時に、それらが構造やボリュームの造形にも合わられている。バラバラなようで纏めている風でバラバラなままの印象も否めない。slashも極小敷地だが、こちらは不整形な隣地境界から最低限のセットバックをとり、許容いっぱいの建築面積を取り、車をギリギリ入れる。不整形なフットプリントにレベル差やグリッドでスラッシュを入れる。短調にならないような操作として上手く行っていると思う。

8.5ハウスはショップかと思いたくなる外観だが、そもそも施主が目立ちたいらしい。そのためにこの敷地を選んだのだろう。ヒエラルキーの無い構造が表現されると尚良さそうだ。もしくは屋根壁に開口を開けて壁の薄さを見せるとか。

Lの敷地の住宅は隅部を外部にしているのは見たことない。けどもうちょっと他のやり方があった気もするのか、あまり突き刺さってはこない。仕上げの決め方も訴えてくるものが欲しいところ。

立面の家は接道側の北と西に小学校があるため開口は極力設けずに、高さ制限から隣地に採光を遮られない位置に設けた開口から採光して、吹き抜けを介して各階に光を導く。吹き抜けの空間や上から降りてくる光はもっとやりようがありそう。接道側の立面も。

上池袋の住宅はかなりの交通量がありそうな都市計画道路が沿いの三角敷地。道路側の開口を減らして工夫している。遮音を考えると構造もRCで適切だと思う。