建築再生日記

建築を見たり読んだり聞いたりして、考えたことを記録するメモ帳

新建築2020年05月号

先日、4月6日になされた緊急事態宣言は5月末まで延長されることが決まった。3密は避けなければならないが様々な活動の全てをストップする訳にもいかず、緊急事態宣言直後の4月半ばに行われた緊急アンケートによると、大半の事務所や大学がテレワーク等により何とか活動を継続できないかと試みている。3密を避けた行動の徹底による感染拡大の抑制は一定成功しているようで、感染者数は4月11日に記録した743人をピークに、5月10日の感染者数は65人と1/10以下にまで減っている。

とは言え様々な活動の自粛による経済的・精神的なダメージが大きくなりつつことの影響が無視できなくなり始めており、特定警戒都道府県に該当しない自治体では自粛要請を解除する動きも見られるようになってきた。

5月7日にレムデシビルが承認されるなどワクチンや特効薬の開発も進められているが、直ちに有効な手段となる保証はなく、今の所は以前の日常が戻ってくる気配はなさそうだ。おそらく当面の間は、刻々と変わる状況に合わせて人間どうしの切断と接続の方法を調整しながら何とか対応するしかなさそうである。

 

京都市美術館は新たに掘られたスロープが特徴であるが、スロープの造成による広場と建物の関係の維持、東西の軸性の強調、室外機で埋め尽くされた広場の屋内化と再整備、地上に持ち上げられ仕上げが本館と微妙にズラされた収蔵棟など、目の前の課題を一つずつクリアして事後的に全体像が明らかになっているらしい。おそらく現場で細かなバランス調整が繰り返されたのだろう。独立した複数のレイヤーを重ねるキュビズムのコラージュという操作によって開かれた「切断」の世界は、コルビジェの作品を通して建築の文脈に位置づけた「虚と実の透明性」やブルーノ・タウトヴェンチューリの「建築の多様性と対立性」に見られ、デコン建築に行き着く。青木はそう言ったバラバラなものがバラバラにあることの先の世界として、切断と接続の同居を試みている。具体的には、レイヤーを継ぎ目なく重ねようとしている。切断しつつ接続させること。そのために、設計作業は過去のレイヤーを紐解くことと、限りなく存在が薄いレイヤーを重ねることに注力されている。とは言うものの大掛かりに手が加えられていることは事実であり、その胆力に脱帽。

建築物の文脈を探り当てて未来に向けてそっと新たな文脈を重ねる行為は弘前れんが倉庫美術館の「延築」にも通じる。BONUS TRACKもある意味では連続的な改修が目指されている。KURKKU FIELDSは敷地そのものを作るようなプロジェクトで、ライフワークとして継続的に関わっていくような気がする。

 GREEN SPRINGSは地上階の駐車場を覆うように設けた人工地盤を緑で覆い、周囲を複合施設で囲む。小杉湯となりは銭湯コミュニティを拡張して地域のサードプレイスになることを目指している。十番コアビルⅡはガラスの奥にコンクリートの天井が眼中に飛び込んでくる。さらっとコアからのキャンチレバーになっており、内から道路を見たアングルではソリッドな感じがする。