建築再生日記

建築を見たり読んだり聞いたりして、考えたことを記録するメモ帳

乾久美子建築設計事務所の仕事

たぶん乾さんが自身の建築観みたいなものをかたちづくったのは、芸大に着任して行ったリサーチを行った頃ではないかと思う。

 

リサーチの結果は「小さな風景からの学び」としてまとめられた。

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ギャラ間の展示会ではタイトルにされたばかりでなく、展示会の内容もひたすらリサーチの写真をそこら中に貼るというものだったらしい。

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「小さな風景からの学び」を一言で言えば、

人間が周囲の環境からの恩恵を得るために積極的に働きかける様子は美しい

ということではなかろうか。

 

ちなみに乾さん自身は「恩恵」ではなく「サービス」という言葉で表現している。

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乾さんが試みていることは、

人に環境へ働きかけることを促すような、建築の自立性や構造をつくることのようだ。たぶんそれはレヴィ=ストロース上野千鶴子が指摘した空間の「権力」が暴走することを避けるために。

 

自律性的な構造をつくると言っても形式主義的なトップ・ダウンの作り方はむしろ避けられるべきものとして講演会では扱われている。かと言って、部分から出発して最終的に全体像が建ち上がるというボトム・アップを意識している訳でもたぶんない。

乾さんが採った方法は、大きな目的に向かって様々な問題を処理する行為を積み重ねるような方法である。乾さん自身は「小さな計画の集合が形式性を伴った構造を生み出しうる」と説明し、「増築的」と表現している。

 

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