建築再生日記

建築を見たり読んだり聞いたりして、考えたことを記録するメモ帳

新建築2020年9月

 

横浜市役所槇文彦の作家性とDB方式の集団性・匿名性が同居している。初期の頃から計画や表現の手法が一貫していること、それが長く通用し続けることに勇気をもらうとともに自分も内にあるイメージを実現させ続けたいと思う。こども本の森 中之島アーバンエッグ/地層空間がかたちを変えて実現したものだと思える。他の作品も含めて原画や原図を初めて見た時に安藤さんの熱量に圧倒された。これぐらい熱量を持って命がけで挑むと、数十年後に実現するチャンスに巡り合えるのかも知れない。何を生み出すのか、そのために自分のリソースを如何にぶつけるのか、再考しよう。

同じ敷地内に建てられた国立アイヌ民族博物館国立民族共生公園 体験交流ホールはともにアイヌの文化を伝える施設であるが、そもそもアイヌは日本的なものなのかどうかを考えさせられるようなものがあるとより良い気がする。そうでないと大英博物館的なショーケースの域を出られないのではないだろうか。体良く展示場を作り上げたという印象は東日本大震災原子力災害伝承館にも共通する。結局、民族的多様性や脱原発といった政治的な正しさをしか拠り所とできないのだろうか。

新風館THE HIRAMATSUザ・ホテル青龍は京都で3つの歴史的建造物を取得して保存・再生しつつ経済や地区発展に寄与するという、大資本かつリテラシーの高い施主だからこそ実現できたプロジェクトである。新風館に関する隈さんのデザインは「点・線・面」で語ったように線で構成しているものであるが、ストリートという言葉を介して古都京都の歴史やジェイコブズといったコンテクストに結びつける手際は流石としか言いようがない。施主と建築家が大学同期というのもな〜。

新宿住友ビル RE-INOVATION PROJECTSOMPO美術館は西新宿の副都心における大規模事務所ビルの改修であるが、両者とも足元のレベルを改修しているのが特徴的である。前者は都市の足元に広場を作り、後者は美術を通じて都市と接続するという新築時の想いを数十年かけて実現、あるいは洗練させたものだと言えそう。

仮設パビリオンであるしらなみNISSAN  PAVILIONはともに円形平面をした膜構造である。前者はカテナリーの曲線と海上に浮かぶ小島のような外形が、白いカラーリングも相まってポエティック。