建築再生日記

建築を見たり読んだり聞いたりして、考えたことを記録するメモ帳

新建築2021年4月号

表紙のLOUIS VUITTON GINZA NAMIKILOUIS VUITTON MAISON OSAKA MIDOSUJI、は論考表層は建築になり得るかの試行錯誤の一環である。店舗の外装デザインだから構造やインテリアの形や素材を直接操作することができないという条件で、いかに建築は作り得るか、という問いである。

前回のGINZA NAMIKIを発表した時に、外装は装飾に過ぎないけれど特定の内部世界への想像を誘うから内部空間と同等になり得るのではないかという論理が展開されているけれど、OSAKA MIDOSUJIではもう一歩進んで、外装が可変性というブランドビルの与件と整合しつつ、かつ内装のきっかけになっている。つまり、ナカミを表すカラという従属的な存在から、ナカミを決定づける主体的な存在に引き上げられている。

ZOZO本社屋は、釣り構造による屋根型の外観が住宅地に呼応しつつ柔らかな大空間を成立させている。また、肌理細やかな仕上げがダイナミックな空間を肌触り良くしている。ダイナミックさと柔らかさが同居する不思議な心地よさがありそう。

カモ井加工紙mt裁断棟は単体というより工場群として見るべきか。少しづつ立て替えることで工場全体がスムーズに事業を行えるようになっているだけでなく、一気に立て替えるよりリスクも小さいだろう。

ここまでの3作品(群)は建築家が建築を通して継続的に企業をサポートしたという共通点がある。一品生産の建築を作ることから、クライアントとの関係は一回きりで終わりになりがちだが、これらのように継続的に事業を作り続ける存在であることの重要性が増していると感じる。

 

大学キャンパス特集では、二つの特集記事を通して、一方通行の知識伝授から対話や議論を通した能動的な相互学習へと学びのスタイルが変化していること、キャンパスが教育・研究の場だけでなく関係者の生活の場でもあり地域資源でもあるとみなされるようになってきていることを理解できた。一言で言えば、教育や学びが民主化しているということだろう。

地面のレベル差を引き込んで色々な場所を作った立正大学品川キャンパス150周年記念館(13号館+6号館)やキャンパスを自分たちの手で作り続ける慶應SFC SBC(スチューデント・ビルド・キャンパス)プロジェクトや今後の自発的な使い方を期待する武蔵野美術大学16号館など色々と学びが多かった。また、大学のキャンパスはそれなりに力を入れてつくられた良質なストックが比較的多いとも考えられ、武蔵野美術大学7・8号館EV棟+工房南山大学 レーモンド・リノベーション・プロジェクトのような事例は増えるだろう。