建築再生日記

建築を見たり読んだり聞いたりして、考えたことを記録するメモ帳

住宅特集2021年8月号/庭

改修 新宿ホワイトハウスは、元々は立体格子を使い続けた磯崎新の幻の処女作である。既存の最大の特徴である吹き抜けをはじめ、屋内は建築家の意向が反映された形跡が全くない。施主がアーティストだから内は自分たちでやるよということか。結果的に建築家が関わったのは、宿木のように張り付くいくつかのエレメント。

鶴岡邸は、大変な力作である。構成要素は①巨大なプランターである連続ヴォールト、②それを支持する鉄骨の柱(ブレースは壁で隠されている)、③内外を区切るスチールとガラスのスクリーンの3つである。生物多様性をもたらす人工物というテーマには共感する。

まち・まち・まちやは論考にもあるとおり新離れの食堂、町家、母屋のサンルーム、庭のプロジェクトの集合である。その土地で引き継がれてきたタイポロジーを引き継ぎつつも、

坂庭の家は敷地の高低差を逆手に取って主階、道路側、公園の3つの庭を有効に配置・利用している。飛び道具的な真新しさではなく基本に忠実な設計がもたらす安心できる良さが魅力的だ。鎌倉寺分の家はくの字のヴォリューム配置で建物に挟まれたプライヴェートな庭を作る。

町中の別荘という珍しいプログラムのA Villa in Townscapeは螺旋状に庭が隆起してピアノ室に至り、小さな公園の中にポツンと立つ小屋みたい。庭の下はピアノ室以外の居室になっていて、半地下に籠ったような雰囲気が感じられる。棚畑ハウスは冠水防止の棚畑に向けて大きく取った開口が干渉帯になっている。

南禅寺疎水の住宅は「野」における京屋敷の改修らしく、庭と建築がセットで存在している。欧州由来の草原に屹立するような在り方ではなく自然の一部たる建築は、白いモダンな建築でも実現可能なのだろうか、と思ったり。妹島さんのHOUSE Aとか西沢さんの森山邸とかはそれに近いかも。薬師田の住居のように参竪穴式住居を参照する例は谷尻さんの作品などが思い出される。類似作品がある場合はその歴史をいかに更新したかという視点が不可欠であるように思う。

天気とくらすイエは角地の道路境界に沿って屋外スペースが螺旋状に地面から屋上まで登る。屋外スペースは建築面積の半分を占め、植栽で溢れている。daita2019のようでもあるが、用途地域が変わると構造も階数も変わる。江波の家はトンネル側の不整形な敷地の中で、雁行配置により建物をうまく収めてビューをとり、繋ぎ庭が近景と遠景をシームレスに連続させている。