建築再生日記

建築を見たり読んだり聞いたりして、考えたことを記録していきます。

住宅特集2019年6月号

住宅特集2019年6月号を読みました。

 

今回は「土間・テラス── 関わりをつくる住まいのあり方」という特集が組まれており、積極的に内外の繋がりをデザインしている作品が多く目立つ点が印象的です。土間やテラスはもちろん大開口やテラスを積極的に設けた作品が散見されます。

 

内外の連続性は日本の住宅においては連綿と受け継がれてきたDNAのようなものですが、そればかりにとらわれると断熱性能に乏しい住宅となりがちです。近年は高気密・高断熱が推奨されており、特集記事でも指摘されているように、住宅の断熱性能は基本的な性能としてますます重用視されるようになるでしょう。

かと言って魔法瓶のように屋外環境から隔離された部屋に住むことは、日本人が古来より培ってきた自然に寄り添った暮らしを捨て去ることを意味します。

 

ぼく達は内外のつなげ方を今一度、再考すべきタイミングなのかも知れません。

 

さて、今回の内容はこんな感じです。

 

特集記事|住宅の創造力を広げる環境工学/伊香賀俊治×中川純× 川島範久

住まい手が主体的に建物に手を加えることを積極的に評価しようとする中川氏と物理的な温熱環境の制御や確保の重要性を指摘する伊香賀氏の対比が印象的。

 

オープンスカイハウス_鈴木理考建築都市事務所+座二郎+髙橋みのり

大胆にも建物の約半分が青空天井(つまり屋外)にされている。安藤忠雄による『住吉の長屋』は建物の1/3を中庭として青空天井にしているが、この作品では建物の約半分が青空天井であり、しかもその部分はリビングである。

 

垂水の住居_タトアーキテクツ/島田陽建築設計事務所

気積の半分近くを半屋外の空間が占めている。

半屋外の空間が特集記事との関連が意図される。

 

two house_きりん

素っ気なく素朴な出で立ちだが、シンメトリーの立面やプランが感じさせる秩序、塗り分けられた外壁に好感が持てる。

4面開口で快適な季節は気持ち良いであろうが、そうでない季節が気になる。断熱性能はどのように設定されているのだろうか。

 

Thong House_西澤俊理

ホーチミンシティに位置する作品。インディペンデント・パレスが参照されているが、もっと影があってこちらの方が気持ち良さそう。今年の始めにホーチミンに行ってインデペンデント・パレスを観て来たので、設計意図はよく分かる。

 

住居No.42_内藤廣建築設計事務所

矩形のLDKワークスペースやキッチン・パントリーが付属され、周囲を土間とテラスがぐるりと囲む。テラスは山並みの方向に開かれ、半透明の屋根が掛けられる。計画の意図は分かるものの、個人的にはこのテラスが使われるイメージはあまり湧かない。

 

井の頭の家_手嶋保建築事務所

コンクリの質感や重量感、光と影、スケール感が気持ち良い。鉄骨造、ボードの白壁、大開口からなる建物とは違った空間がつくられている。幾何学が少しずつ崩されているのもいい。

 

豊見城の住宅_中村好文+佐藤重徳

テラスの手すりやルーバーがあることによって、日射が遮られたり周囲の緑がより近く感じられる。ひんやりとした空気感や台風への備えも含めて、木造では出来なそうな構成。

 

母屋とハナレ_川辺直哉建築設計事務所

相続による敷地の分筆とそれに伴うアパート建設がすすむ鎌倉の住宅地が敷地である。周囲のアパートのような出で立ちが特徴的。屋根とスラブで家族と周囲とつながれるか。

 

デッキプロジェクト_魚谷剛紀/Uo.A

よう壁を建築に取り込むことで、普通に新築するとまず発生しない空間が生まれている。また、通常は盛土する部分を屋内空間とすることで開放的なプライベート空間となっている。

 

重箱の家_堀尾浩建築設計事務所

三重の住宅

 

千客万来の住まい_山﨑健太郎デザインワークショップ

みんなの庭とリビングを一体として扱おうという意図が感じられる。がっしりした床によって場所を規定しようとしている。

 

耕の家_小笹泉+奥村直子/IN STUDIO

 

三宅の家_PLANET Creations 関谷昌人建築設計アトリエ

回廊と中庭のレベル差があり過ぎで分断されているように感じた。

 

土太郎の家_高野保光/遊空間設計室

軸振りもスキップフロア同様に周囲と呼応した結果なのだろうか?

 

露地を愉しむ家_服部信康建築設計事務所

通路を曲げることによって路地性が強調されるとともに奥性が生まれてい。中庭の存在が心地よさを獲得している。

 

上原の家_佐々木勝敏建築設計事務所

そのうち追記。

 

安中の家_谷尻誠・吉田愛/SUPPOSE DESIGN OFFICE

そのうち追記。 

 

 

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それでは今日はこの辺で。

新建築2019年5月号

新建築2019年5月号を読みました。

 

 

今回の内容はこんな感じです。 

 

 

はじめに

SANAAと妹島事務所の2作から始まるあたりに編集の意図を感じるなーというのが率直な第一印象だった。1人が設計した複数の作品を載せる場合、そう扱う以外にないだろうという気もする。

 

日立市新庁舎 妹島和世西沢立衛SANAA

広場の上に架けられた軽快でリズミカルな屋根に目を引かれる。市庁舎へ向かう方向性が付与されつつおおらかな空間が出来上がっており、特定の目的がなくてもふらっと立ち寄りたくなるような空間になっていそうである。素材は厚さ6ミリの鉄板であり、10メートルというスパンを確保しながらも軽快さの獲得とたわみの防止の狭間で格闘されたことだろう。

日本女子大学 図書館 
妹島和世建築設計事務所清水建設設計共同企業体

図書館といえば、蔵書収容と机の配置やレファレンス機能の効率性だけが追求されがちなビルディング・タイプで、出来上がった空間はじっと座って書籍に向かうだけの場所を生み出してしまいがちのように思われる。

この作品では、矩形の建物の中央にほぼ全ての機能を配置し、その周囲をスロープがぐるっと回遊しながら各階を繋ぐという立体的な図式が採用されている。このことによりさまざまな光や景色が生まれつつ、自分がどこにいるかも直感的に分かる状態がつくりだされている。スラブどうしのズレも視界や光の通り道になっており効果的である。

ダイヤゲート池袋
川島克也+岡田耕治+伊藤佐恵/日建設計

斜め格子という同じモチーフを採用しながら、低層階と中上層階の対比が印象的である。低層階は鉄道の駅舎と交錯することもあり土木的なスケールで荒々しいV字型の躯体が建物を支持する。免震層により構造的にも意匠的にも縁が切られた上に華奢な鉄骨造のフレームが乗せられている。これは意匠上の対比はもちろん、建物の自重を小さくすることで免震層や低層階にかかる地震力を小さくするという工学的にも合理的な判断がなされている。

清春芸術村ゲストハウス 
新素材研究所

庭の石や草木を愛でるように、建物も素材が本来備えている心地よさを引き出す工夫が素材の選定、寸法調整、ディテールなどに見られる。

特集記事:「地域の建築」は設計できるか 
塚本由晴

尾道駅 
アトリエ・ワン(デザイン監修) 西日本旅客鉄道 ジェイアール西日本コンサルタンツ

 

五ケ山クロス ベース 
平瀬有人+平瀬祐子/yHa architects

地域の建築という特集は必然的に地方(田舎)の作品が多く掲載されることに繋がり、またその結果として今回は屋根の検討に力点が置かれている作品が多い印象を受けた。その中でこの作品はキメ写真に床が取り上げられている希有なものである。

多賀町中央公民館 多賀結いの森
大西麻貴+百田有希/o+h

住宅スケールの小さなヴォリュームに分散されることで木密地のような様相を呈している。片流れの屋根が様々な方向に向けられることでその特質がより一層強調されるとともに、随所にハイサイドライトが設けられている。これらに加えて雁行配置により生じた様々な庭や外部との関係性、回遊性のあるプランは地元の民家が参照されているとのことである。

魅力的な建物であることに間違いはないが、プロポーション、素材、レベル、スケール感などはもう少し変化を持たせても良いように思われた。

 

やま仙/Yamasen Japanese Restaurant
小林一行+樫村芙実/TERRAIN architects

工場や倉庫のようなスケールを持つ印象的な架構であるが、ほぼ人力で施工されている。現地の人間によるセルフビルドを可能にしているのはローテクによる接合部の計画である。

 

菊鹿ワイナリー6次産業化連携推進施設 AIRA RIDGE 
井手健一郎/リズムデザイン+高木冨士川計画事務所

こちらも同様にローテクの在来工法で端正な架構がつくられている。屋根梁以外の躯体メンバーが統一されて軽快なリズムが生まれている。屋根の高さや形状はその結果として導かれたものであるそうだ。結果的に周囲の山並みとも調和しているように思われる。

構造的な検討により生じた屋根の形状が結果的に周囲の山並みと調和しているという点や、草木と対比的なサーモンピンクの色使いなど【すばる保育園】と共通するものがあるように思われる。

 

参考:2018年6月号168頁──すばる保育園──藤村龍至/RFA+林田俊二/CFA | 2018年 | 新建築データベースβ

 

軽井沢町農作物等直売施設 軽井沢発地市庭 
宮本忠長建築設計事務所

こちらは地域性に配慮して木造と勾配屋根を前提としつつも、無柱の大空間を確保するためにRCの耐震壁で木造トラス架構を支持する計画が採られている。結果的には上作に比べてタフな印象となっている。

屋根形状を周囲の山並みに調和させるのは上作と共通。

 

当麻町役場
山下設計 柴滝建築設計事務所

こちらも木造の軸組が印象的である。執務エリアでは無柱空間を諦める代わりに在来工法での施工が可能となり、地場の工務店でも施工できそうな設計が木材の地産地消を可能にしている。

 

鷹栖地区住民センター
アトリエブンク

木造の在来工法で大きな空間を確保するために様々な架構の検討がなされているが、それがあまり空間に影響していなそうな点がもったない。

 

東川町複合交流施設 せんとぴゅあII
小篠隆生+ブンク・アイエイ・KITABA特定建築設計共同企業体 

複合化された公共施設であることから様々な人が出会う建物をつくることが意図されている。これには「プログラムを出来る限り細分化してそれらの接触面積を最大化する」という方法が過去にOMAによって提案されているが、この作品ではワンルームという戦略が採られている。その戦略がプログラムの融合を生み出すのか見てみたいところ。

 

ここに書けなかった作品

時間の関係でアウトプットまで至らなかった作品たち。後日アップするかもです。

COCONOアートプレイス
中西ひろむ建築設計事務所
輪島KABULET
五井建築研究所
分割造替 金峯神社 —里の拝殿 森の本殿 遥かなる聖山—
渡辺菊眞+D環境造形システム研究所

 

 

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それでは今日はこの辺で。

このブログについて

こんにちは。

 

再生建築の設計をしているワタナベです。

 

ずっと再生建築について解説するブログを書いています。

saiseikenchiku.hatenablog.com

 

再生建築の解説以外にも、建築・住宅を扱った雑誌を読んだ感想や他の建築家さんがつくられた建物を見学させていただいたりした感想を時どき書いて来ました。

それらの記事を書きながら、「考えた事を文章化する作業は、自分の考えを人に伝える良いトレーニングになるだけでなく思考力も養われるのではないか」と考えるようになりました。

それはおそらく、頭の中でイメージしたプランを図面や模型にすることで案が相対化され外から眺めることができるように、文章化することで頭の中に浮かんだ考えを客観視できるようになるからだろうと思っています。

 

 

それでは今日はこの辺で。