建築再生日記

建築を見たり読んだり聞いたりして、考えたことを記録していきます。

住宅特集2019年8月号

住宅特集2019年8月号を読みました。

今月号は庭特集ということで屋外との繋がり方を模索している作品が多いです。

 

 

作品15題

daita2019_山田紗子建築設計事務所

  • なんかどこかで見たことあるなぁ・・・というのが第一印象だったのですが、新しい建築の楽しさ展の会場構成をされていた方なのですね。線材が多用されているところが共通の感性を感じさせますね。

 

荏原台地の家_三家大地建築設計事務所
特集論考1:地形をつくるように場をつくり、家をつくる 三家大地 

  • 8帖くらいのこぢんまりとしたスケールごとに空間が分節されていて安心感がある。分節された空間ごとに仕上が変えられていることも効いている。部分的には2.7mくらいの天井高さが確保されている部分もあって開放的な部分もありそう。
  • 論考で述べられているように生きる歓びに満ちている感じがするのは、施主が自分の生活で本当に必要なものを建築家と一緒に考えたことが現れているからだと思う。世間的に必要とされているものを手に入れるのではなく。

ゾーニングする山_栗原健太郎+岩月美穂/studio velocity一級建築事務所

  • 地形をよく読んでいる。地面の起伏が建物の配置や外形を決定している。窓の配置も地形の起伏を読んで適切な建物どうしの関係性を結ぼうとしている。
  • このように建蔽率容積率とも上限を大幅に下回る計画はどこまで汎用性があるのだろう。

畑と家_荒内要建築設計事務所

  • 横に倒したT字型の敷地の中で曲線のポーチで2棟の建物が接続される構成。この形式は前面道路、庭、隣家との距離の取り方を調整するために採用されたみたい。

船橋家_手嶋保建築事務所

  • 毎月のように作品が掲載されている。住宅スケールだけで広がりのある空間をつくれているのは、それそこ庭と部屋のつなげ方が上手いからだと思う。

小石川の家_手嶋保建築事務所

  • 手嶋さんの作品は2つともRC造。RC造って住宅にしては部材断面が大きかったり強度が高いし触った感じも冷たいし、木と比べて住宅としてはスケールオーバーした素材だと思っている。手嶋さんの作品では人が触れる部分は木などの人間スケールの素材が使われていて、コンクリートはあくまで構造材であることに徹していることが表現されている。これが心地よさと安心感をもたらしているのではなかろうか。あとはちょっと目地が入っていたりしてコンクリート部材もスケールダウンさせる技が使われている。

武蔵野の家_横内敏人建築設計事務所

  • 構成が自分の近作と類似している。具体的には南側を2層吹き抜けとして大きな開口をもつLDKとし、北側や2階に居室や水周りが配置されている。
  • こちらの作品のほうがより徹底されていて、南側は前面開口とされておりリビングと庭の関係は自分の近作におけるそれとは全く異なる。これを可能にしているのは庭の植栽と塀。

4+1HOUSE_ヨネダ設計舎/米田雅樹

  • 屋内(なのかどうか分からない中庭と廊下)はかなりハードな温熱環境になると思う。ここまでして中庭と屋内を近づける必要あるのだろうか?

ペッタンコハウス2 _田辺雄之建築設計事務所

  • 半分規格品のような作品。篠原一男が唱えた「原型住宅」に通じるものがあるアイディア。こういった製品を考えると矩形の平面、単純な架構とプラン、ローコストにまず行き着くと思われる。
  • シリーズ化といってもどれも一品生産で設計するようなので、実際は作風と言ってもいいのかも知れない。

HINO2_武藤圭太郎建築設計事務所

  • 母屋の屋根を屋外空間まで延長させて敷地全体を半屋外のように扱う、という形式の作品は定期的に掲載される。これは日本あるいは東アジアだけの傾向なのだろうか。

側庭の家_大塚聡アトリエ

  • 近隣に位置する保育園からの音を考慮して二重の壁をRCで建て、その壁と壁の間を庭として植物を植えた計画。視線や直射などを調整するバッファゾーンとして可能性があるので、そこをもっと追求しても良いように思う。テラスと一体になったバスルームがあるとか。

売布山手の家_岸本貴信

  • 擁壁に囲まれるという敷地条件を逆手にとって設置階をガラス張りにして開放的にした計画。2階がどのような空間になっているかも見たかった。
  • 1階を無柱空間とするために鉄骨造が採用されるなどちょっとコスト的に無理をしている気もする。温熱環境的にも外皮全てがガラス張りというのは考えもの。もっと開く部分を限定しても同じような開放感を獲得できたという気もする。

TAKARAZUKA HUTS_前田茂樹+木村公翼/ジオ−グラフィック・デザイン・ラボ

  • 分棟配置とすることで屋外空間をつくることが意図されてるが、せっかくいつくかの屋外空間に分節されている割にはそれぞれの庭が単調で変化がない。庇もないし樹木も小さいので屋外環境としてはちょっと過酷な気もする。樹木が育てば日影とかできて気持ちよくなることを狙っているのかな?

森と空へ_岸本和彦/acaa

  • これくらい敷地と延床面積が大きくなるとどのように空間を分節したらよいか迷いそう。方法としては大きくて抽象的な空間をつくるか空間をたくさんつくって変化を出すか。

5つの光庭をもつ家_新妻邦仁+新妻多恵子/ハコプラスデザイン

  • 中庭を中心に同じような気積の室が数珠状に連結される形式。多少の使い方が変わってもびくともしなそうな強さがある。 

 

▼購入されたい方はこちらからどうぞ。

 

shinkenchiku.online



 

それでは今日はこの辺で。

見え隠れする都市ー槇文彦

「見え隠れする都市」を読みました。

 

 

著者である槇文彦さんと言えば、ぼくにとってはちょっとした特別な存在である。

大学1年生の頃に初めて買った建築本は槇さんの作品集とコルビジェの解説本だった。

翌年に初めて上京した建築見学一人旅でのハイライトはヒルサイドテラスだった。

通っていた大学は唯一の設計の教員が槇研出身だった。

 

だから槇さんの著作はいつかきちんと読まなければと思っていた。

なのについつい後回しにしてしまったせいで、本書を手にするまでに10年以上もかかってしまった。

 

さて、本書の内容をざっくりまとめると、起伏にとんだ江戸・東京という都市を観察することで、武家屋敷・長屋・裏長屋・郊外住宅という日本の住宅におけるプロトタイプがある事を指摘した上で、それらがどのような表層=道との関係を持つかを整理するとともに、道にも城下町の「尾根道・通り・路地」や農村の「街道・畦道・ニワ」といったヒエラルキー・特長があり、道が構成するグリッドが日本と西洋では根本的に異なる存在である、といった事が写真や図解とともに考察・解説されたものである。

 

本書によれば、日本の都市が特徴的な点は西洋的な都市が「中心ー区画ー垂直」指向であるのに対して、「脱中心ー包摂ー水平」的な空間を指向である点である。

これを一言で表した言葉が「奥性」なる概念だということになるだろうが、日本的な都市がこのような「奥性」を持つようになったのは、日本人の自然観に由来すると論じられている。

 

日本人は狭い国土の中で比較的温暖な気候に抱かれて農耕をしてきた。自然は恵みをもたらすものであり共に生きる存在であり信仰の対象となった。

一方で日本列島以外で発達した古代文明が対峙した自然は彼らが砂漠や海や荒野であり、無限の広がりを持ち危険な存在であった。

彼らが発達させてきた都市が「カオスの中に堅い殻で区画されたコモスを構築する」といったはごく自然なことであり、「自然に寄り添いつつ文明を発達させる」という戦略をとったぼくたち日本人がむしろ特異な存在なのである。

 

そう言えば、レム・コールハースが展開する「voidの戦略」はまさに「カオスの中に堅い殻で区画されたコモスを構築する」という西洋人の世界観・建築観そのものではないか。「錯乱のニューヨーク」、「S,M,L,XL」、「行動主義」を読んどいて良かった。

 

それに、初めてのヨーロッパ旅行で泊まった屋根裏部屋から見えたパリ大聖堂は、まさにパリの中心として屹立していた。いや、ただ僕の記憶が改ざんされて見えたと思い込んでいるだけで実際には見えなかったかも知れない。でもあの塔を感じたことは事実であり、その事がパリという都市に明確な中心が存在することを物語っている。

 

昔の気付きと今の気付きが幾重にも線で繋がる。

これだから建築は面白い。

 

 

西洋の都市ではパリ大聖堂のような中心がある一方、 日本の都市で中心を挙げるとするならば城や御所ということになるだろう。

だが、日本の都市は輪郭が曖昧であることから御所や江戸城ノートルダムほどの中心性は持ち得ていない。さらに、都市を構成するグリッドは外の山々や寺社に向かっており、都市の重心は外に外に流れ出る。

 

山はハレの場であり信仰の対象である。

人が住むケの場は里である。

 

学部時代の教員が当時、「サトヤマビレッジ」という開発計画に取り組んでいた。サトヤマとは里と山の融合だろう。人間の住処ばかり増やそうとする従来型の宅地開発を批判的に乗り越える方法として、里(人の住処)と一緒に山(自然)も増やす仕組みが考えられた。これがサトヤマビレッジというプロジェクトである。

 

また、彼は大学に就く前に働いていた会社で担当した作品を見せてくれたことがあった。それらは「まちの表層」で論じられていたエッセンスを彼なりに解釈して実践したものであるように思われた。

もちろんそれは槇さん本人の作品でも同様であり、ヒルサイドテラスアネックスのアルミスクリーンはその典型的な例であろう。

 

そのことが本書を読む事で理解できた。 

昔の気付きと今の気付きが幾重にも線で繋がる。

これだから建築は面白い。

 

 

 

 

 

▼購入されたい方はこちらからどうぞ。

 

見えがくれする都市―江戸から東京へ (SD選書)

見えがくれする都市―江戸から東京へ (SD選書)

 

 



 

それでは今日はこの辺で。

住宅特集2019年7月号

住宅特集2019年7月号を読みました。

 

今回はこんな感じで2本立てになっています。

 

作品12題

house S/shop B_木村松本建築設計事務所

  • 細長矩形で間仕切りのない平面、家型、板金の外壁、立面のプロポーション、大きめの開口の開け方などが木村松本っぽさを感じさせる。異様な棟状比(ほぼ1:4→高さ7,798幅員2,000)の短辺方向と浅い奥行きが強調された長辺方向(勾配屋根が少しだけ見えたり大きな開口から奥の外壁が見えることで奥行きの浅さが明示されている)が特徴的
  • 木造フレームと開口がズレて配置されているため大梁、筋交い、柱などの構造が露になる。
  • 什器を頼りにブレースを3次元的に避けながら浅い奥行きと高い天高の路面に投げ出されたような店内を歩きまわるように計画することで、建物は前面道路の電柱や並木などの周辺環境と一体化するように計画されている。
  • CH2100未満の部分は実質的に面積に算定されていない?

 

滝山の住居_タトアーキテクツ/島田陽建築設計事務所

  • 村松本と同じく1枚目の写真を見ただけで誰の作品か分かる。高く持ち上げられた小屋。家型、細長の矩形、板金の外壁と屋根。板金小波
  • 吉岡賞を受賞した六甲の住宅(住宅特集1202号)をはじめとして「斜面上に持ち上げられた小屋のような住宅」というモチーフは島田さんの定番モチーフとなっている感がある。この作品では既存のデッキを手がかりとして扇状のヴォリューム配置としてテラスを新たに生み出していることが特長と言えよう。
  • 細長い家型という同じモチーフを使いながら、木村松本のhouse S/shop B_木村松本建築設計事務所が長辺方向で外界と繋がろうとしているのに対して、滝山の住居_タトアーキテクツ/島田陽建築設計事務所は強い軸性を持たせ短辺方向で六甲の遠景を取り込もうとしているという対比が面白い。

 

町屋の工場と家_富沢真二郎+池田晃一+田中大朗/TIT

  • 構成が面白いだけに、それがもっと表現されると良かった。例えば1階は全てシャッターにしてしまえばスカイハウスばりの迫力を持たせる事が出来たのではなかろうか。まぁそもそも近代建築において構造と表現の一致が重視された理由は、表層の様式を追求するだけになっていた前近代の建築家の活動自体を批判的に乗り越えるべく深層(=構造)に積極的に関与し始めたことを表現するためだった(と僕自身は考えている)訳だけれど、もはや構造に対する建築家(や構造エンジニアとのコンビ)の主権は勝ち取って久しい訳だし、今さらわざわざ声高に主張するものでもないかも知れない。それよりも今は設計者が不特定多数になったり古典的な建築家以外の分野からも算入があったりする現状に相応しい建築のあり方を考えることなのではないかとも思う。
  • 幕板、軒、手摺などファサードに積極的に用いられたドブヅケは町工場が多そうなこの地域に良く馴染んでいると思う。

 

坂牛邸_坂牛卓+O.F.D.A.
論考2:運動と風景 坂牛卓

  • 坂牛さんよく誌面で見ることに気づいた。おそらく初めてHPを見てみるとこれまで見た事のある作品がいくつか。篠原スクールの方なのか。今回の作品がSDレビュー2017の入選作であることに気がつく。
  • 流動的に繋がった内部空間に光、風、音などの環境要素や人の流れと淀みが生じることを伺わせる。一方で外観は広くない敷地内に最大のヴォリュームを確保する以外にどのような問題意識があるかを知りたいとも思った。

 

菊井邸_SUO
論考3:集まって住むこと 周防貴之

  • 西沢立衛大八木邸(住宅特集1808号)に近い雰囲気を感じた。設計者の周防さんの経歴をみると妹島事務所・SANAAで修行していてなるほどなと。
  • 外壁に使っている木は大八木邸と同じかな?鉄骨造なのにわざわざ木を貼る理由は?
  • ひとつの家族の住まいであり4人の個人の住まいであるという両義性に応えようとするアプローチには共感するとともに、6帖〜8帖くらいのスペースを立体的に繋げる・隔てるという操作はある意味で一般的な住宅と同じようにも思われる。1つひとつのボックスがもっと境界なく溶け合っても良い気がした。

 

葉山の家_堀部安嗣建築設計事務所

  • 安定の堀部建築というか、堀部さんの建築は昔のものも今のものもほとんど同じと言ってもいいくらいで、昔の作品をみても全く色褪せない心地よさがある。
  • 新建築賞の審査員として受賞候補者に対して行ったインタビューを見返したが、細やかな配慮に対する意識の高さが凄い。このように誠実でありたい。

 

NGA House_Sanuki Daisuke architects

  • 面積や気積を大きくすると視覚的には豊かな空間となりやすく写真映えするのだけれど、温熱環境のコントロールに苦労する事が多い。ベトナムという熱帯に建つ建物では上下階の室温がかなり変わるのではないだろうか。開口がおそらくシングルガラスであるのと外壁に断熱が全くなさそうな点も気になる。

 

物質試行59 官舎プロジェクト_鈴木了二 吉村昭
論考1:小屋の5原則 鈴木了二

  • 吉岡賞の候補に西沢平良さんの宇都宮のハウス(住宅特集0901号)が候補にあがったとき、確か審査員だった西沢立衛さんが「この住宅はショールームみたいだ」と批判していた記憶があるけれど、それと似たような印象を抱いた。論考で言っていることは分かるけれど、どうしてもここで住むイメージが湧かないのは、たとえば縁側に出ても隣家が気になるだろうと思われる点など何となくリアルな生活が見えてこない点なのかな。その原因はおそらくプロトタイプの開発に力を注ぎ込み過ぎた事にあるのではないかな?と思ったり。プロトタイプと言えば51cなんかは近代日本で圧倒的に普及したプロトタイプのひとつだと思うけれど、たぶんこれは設計者(吉武如水さんたち)が人の生活をリアルに想像していたからなのではないだろうか。まぁぼくが小さな頃から何度も見て来たのは51cではなく51cを元に色んな人が色んな状況やコンテクストに応じて改良を重ねたものであり、プロトタイプとういよりはプロトタイプが状況に応じて変化したものなのだから、プロトタイプとして建設された本作品や宇都宮のハウスとは状況が違うのだけれど。

 

 

以下、そのうち追記。 

HINO1_武藤圭太郎建築設計事務所

大磯の大きな家_+ft+/髙濱史子建築設計事務所

HOUSE IN TODOROKI_noiz
論考4:ゲームエンジンで拡張する身体・空間デザイン 酒井康介+ミン・キョンソク

古市の家_神家昭雄建築研究室

 

特集企画 建築家の家具14題 

面白いのは浅子佳英+甲斐貴大かな。

 

▼購入されたい方はこちらからどうぞ。

shinkenchiku.online



 

それでは今日はこの辺で。

住宅特集2019年6月号

住宅特集2019年6月号を読みました。

 

今回は「土間・テラス── 関わりをつくる住まいのあり方」という特集が組まれており、積極的に内外の繋がりをデザインしている作品が多く目立つ点が印象的です。土間やテラスはもちろん大開口やテラスを積極的に設けた作品が散見されます。

 

内外の連続性は日本の住宅においては連綿と受け継がれてきたDNAのようなものですが、そればかりにとらわれると断熱性能に乏しい住宅となりがちです。近年は高気密・高断熱が推奨されており、特集記事でも指摘されているように、住宅の断熱性能は基本的な性能としてますます重用視されるようになるでしょう。

かと言って魔法瓶のように屋外環境から隔離された部屋に住むことは、日本人が古来より培ってきた自然に寄り添った暮らしを捨て去ることを意味します。

 

ぼく達は内外のつなげ方を今一度、再考すべきタイミングなのかも知れません。

 

さて、今回の内容はこんな感じです。

 

特集記事|住宅の創造力を広げる環境工学/伊香賀俊治×中川純× 川島範久

住まい手が主体的に建物に手を加えることを積極的に評価しようとする中川氏と物理的な温熱環境の制御や確保の重要性を指摘する伊香賀氏の対比が印象的。

 

オープンスカイハウス_鈴木理考建築都市事務所+座二郎+髙橋みのり

大胆にも建物の約半分が青空天井(つまり屋外)にされている。安藤忠雄による『住吉の長屋』は建物の1/3を中庭として青空天井にしているが、この作品では建物の約半分が青空天井であり、しかもその部分はリビングである。

 

垂水の住居_タトアーキテクツ/島田陽建築設計事務所

気積の半分近くを半屋外の空間が占めている。

半屋外の空間が特集記事との関連が意図される。

 

two house_きりん

素っ気なく素朴な出で立ちだが、シンメトリーの立面やプランが感じさせる秩序、塗り分けられた外壁に好感が持てる。

4面開口で快適な季節は気持ち良いであろうが、そうでない季節が気になる。断熱性能はどのように設定されているのだろうか。

 

Thong House_西澤俊理

ホーチミンシティに位置する作品。インディペンデント・パレスが参照されているが、もっと影があってこちらの方が気持ち良さそう。今年の始めにホーチミンに行ってインデペンデント・パレスを観て来たので、設計意図はよく分かる。

 

住居No.42_内藤廣建築設計事務所

矩形のLDKワークスペースやキッチン・パントリーが付属され、周囲を土間とテラスがぐるりと囲む。テラスは山並みの方向に開かれ、半透明の屋根が掛けられる。計画の意図は分かるものの、個人的にはこのテラスが使われるイメージはあまり湧かない。

 

井の頭の家_手嶋保建築事務所

コンクリの質感や重量感、光と影、スケール感が気持ち良い。鉄骨造、ボードの白壁、大開口からなる建物とは違った空間がつくられている。幾何学が少しずつ崩されているのもいい。

 

豊見城の住宅_中村好文+佐藤重徳

テラスの手すりやルーバーがあることによって、日射が遮られたり周囲の緑がより近く感じられる。ひんやりとした空気感や台風への備えも含めて、木造では出来なそうな構成。

 

母屋とハナレ_川辺直哉建築設計事務所

相続による敷地の分筆とそれに伴うアパート建設がすすむ鎌倉の住宅地が敷地である。周囲のアパートのような出で立ちが特徴的。屋根とスラブで家族と周囲とつながれるか。

 

デッキプロジェクト_魚谷剛紀/Uo.A

よう壁を建築に取り込むことで、普通に新築するとまず発生しない空間が生まれている。また、通常は盛土する部分を屋内空間とすることで開放的なプライベート空間となっている。

 

重箱の家_堀尾浩建築設計事務所

三重の住宅

 

千客万来の住まい_山﨑健太郎デザインワークショップ

みんなの庭とリビングを一体として扱おうという意図が感じられる。がっしりした床によって場所を規定しようとしている。

 

耕の家_小笹泉+奥村直子/IN STUDIO

 

三宅の家_PLANET Creations 関谷昌人建築設計アトリエ

回廊と中庭のレベル差があり過ぎで分断されているように感じた。

 

土太郎の家_高野保光/遊空間設計室

軸振りもスキップフロア同様に周囲と呼応した結果なのだろうか?

 

露地を愉しむ家_服部信康建築設計事務所

通路を曲げることによって路地性が強調されるとともに奥性が生まれてい。中庭の存在が心地よさを獲得している。

 

上原の家_佐々木勝敏建築設計事務所

そのうち追記。

 

安中の家_谷尻誠・吉田愛/SUPPOSE DESIGN OFFICE

そのうち追記。 

 

 

▼購入されたい方はこちらからどうぞ。

shinkenchiku.online

 

それでは今日はこの辺で。

新建築2019年5月号

新建築2019年5月号を読みました。

 

 

今回の内容はこんな感じです。 

 

 

はじめに

SANAAと妹島事務所の2作から始まるあたりに編集の意図を感じるなーというのが率直な第一印象だった。1人が設計した複数の作品を載せる場合、そう扱う以外にないだろうという気もする。

 

日立市新庁舎 妹島和世西沢立衛SANAA

広場の上に架けられた軽快でリズミカルな屋根に目を引かれる。市庁舎へ向かう方向性が付与されつつおおらかな空間が出来上がっており、特定の目的がなくてもふらっと立ち寄りたくなるような空間になっていそうである。素材は厚さ6ミリの鉄板であり、10メートルというスパンを確保しながらも軽快さの獲得とたわみの防止の狭間で格闘されたことだろう。

日本女子大学 図書館 
妹島和世建築設計事務所清水建設設計共同企業体

図書館といえば、蔵書収容と机の配置やレファレンス機能の効率性だけが追求されがちなビルディング・タイプで、出来上がった空間はじっと座って書籍に向かうだけの場所を生み出してしまいがちのように思われる。

この作品では、矩形の建物の中央にほぼ全ての機能を配置し、その周囲をスロープがぐるっと回遊しながら各階を繋ぐという立体的な図式が採用されている。このことによりさまざまな光や景色が生まれつつ、自分がどこにいるかも直感的に分かる状態がつくりだされている。スラブどうしのズレも視界や光の通り道になっており効果的である。

ダイヤゲート池袋
川島克也+岡田耕治+伊藤佐恵/日建設計

斜め格子という同じモチーフを採用しながら、低層階と中上層階の対比が印象的である。低層階は鉄道の駅舎と交錯することもあり土木的なスケールで荒々しいV字型の躯体が建物を支持する。免震層により構造的にも意匠的にも縁が切られた上に華奢な鉄骨造のフレームが乗せられている。これは意匠上の対比はもちろん、建物の自重を小さくすることで免震層や低層階にかかる地震力を小さくするという工学的にも合理的な判断がなされている。

清春芸術村ゲストハウス 
新素材研究所

庭の石や草木を愛でるように、建物も素材が本来備えている心地よさを引き出す工夫が素材の選定、寸法調整、ディテールなどに見られる。

特集記事:「地域の建築」は設計できるか 
塚本由晴

尾道駅 
アトリエ・ワン(デザイン監修) 西日本旅客鉄道 ジェイアール西日本コンサルタンツ

 

五ケ山クロス ベース 
平瀬有人+平瀬祐子/yHa architects

地域の建築という特集は必然的に地方(田舎)の作品が多く掲載されることに繋がり、またその結果として今回は屋根の検討に力点が置かれている作品が多い印象を受けた。その中でこの作品はキメ写真に床が取り上げられている希有なものである。

多賀町中央公民館 多賀結いの森
大西麻貴+百田有希/o+h

住宅スケールの小さなヴォリュームに分散されることで木密地のような様相を呈している。片流れの屋根が様々な方向に向けられることでその特質がより一層強調されるとともに、随所にハイサイドライトが設けられている。これらに加えて雁行配置により生じた様々な庭や外部との関係性、回遊性のあるプランは地元の民家が参照されているとのことである。

魅力的な建物であることに間違いはないが、プロポーション、素材、レベル、スケール感などはもう少し変化を持たせても良いように思われた。

 

やま仙/Yamasen Japanese Restaurant
小林一行+樫村芙実/TERRAIN architects

工場や倉庫のようなスケールを持つ印象的な架構であるが、ほぼ人力で施工されている。現地の人間によるセルフビルドを可能にしているのはローテクによる接合部の計画である。

 

菊鹿ワイナリー6次産業化連携推進施設 AIRA RIDGE 
井手健一郎/リズムデザイン+高木冨士川計画事務所

こちらも同様にローテクの在来工法で端正な架構がつくられている。屋根梁以外の躯体メンバーが統一されて軽快なリズムが生まれている。屋根の高さや形状はその結果として導かれたものであるそうだ。結果的に周囲の山並みとも調和しているように思われる。

構造的な検討により生じた屋根の形状が結果的に周囲の山並みと調和しているという点や、草木と対比的なサーモンピンクの色使いなど【すばる保育園】と共通するものがあるように思われる。

 

参考:2018年6月号168頁──すばる保育園──藤村龍至/RFA+林田俊二/CFA | 2018年 | 新建築データベースβ

 

軽井沢町農作物等直売施設 軽井沢発地市庭 
宮本忠長建築設計事務所

こちらは地域性に配慮して木造と勾配屋根を前提としつつも、無柱の大空間を確保するためにRCの耐震壁で木造トラス架構を支持する計画が採られている。結果的には上作に比べてタフな印象となっている。

屋根形状を周囲の山並みに調和させるのは上作と共通。

 

当麻町役場
山下設計 柴滝建築設計事務所

こちらも木造の軸組が印象的である。執務エリアでは無柱空間を諦める代わりに在来工法での施工が可能となり、地場の工務店でも施工できそうな設計が木材の地産地消を可能にしている。

 

鷹栖地区住民センター
アトリエブンク

木造の在来工法で大きな空間を確保するために様々な架構の検討がなされているが、それがあまり空間に影響していなそうな点がもったない。

 

東川町複合交流施設 せんとぴゅあII
小篠隆生+ブンク・アイエイ・KITABA特定建築設計共同企業体 

複合化された公共施設であることから様々な人が出会う建物をつくることが意図されている。これには「プログラムを出来る限り細分化してそれらの接触面積を最大化する」という方法が過去にOMAによって提案されているが、この作品ではワンルームという戦略が採られている。その戦略がプログラムの融合を生み出すのか見てみたいところ。

 

ここに書けなかった作品

時間の関係でアウトプットまで至らなかった作品たち。後日アップするかもです。

COCONOアートプレイス
中西ひろむ建築設計事務所
輪島KABULET
五井建築研究所
分割造替 金峯神社 —里の拝殿 森の本殿 遥かなる聖山—
渡辺菊眞+D環境造形システム研究所

 

 

▼購入されたい方はこちらからどうぞ。 

shinkenchiku.online

 

それでは今日はこの辺で。

このブログについて

こんにちは。

 

再生建築の設計をしているワタナベです。

 

ずっと再生建築について解説するブログを書いています。

saiseikenchiku.hatenablog.com

 

再生建築の解説以外にも、建築・住宅を扱った雑誌を読んだ感想や他の建築家さんがつくられた建物を見学させていただいたりした感想を時どき書いて来ました。

それらの記事を書きながら、「考えた事を文章化する作業は、自分の考えを人に伝える良いトレーニングになるだけでなく思考力も養われるのではないか」と考えるようになりました。

それはおそらく、頭の中でイメージしたプランを図面や模型にすることで案が相対化され外から眺めることができるように、文章化することで頭の中に浮かんだ考えを客観視できるようになるからだろうと思っています。

 

 

それでは今日はこの辺で。