建築再生日記

建築を見たり読んだり聞いたりして、考えたことを記録するメモ帳

住宅特集200年6月号

巻頭論文リノベーションの点と線は、近現代の建築が新築と保存の二項対立に陥っている点を批判し、改修工事を再開発・再利用・文化財の3つが複合した行為として捉えようとしている。点としての建築家への評価と、線としての建物の評価。特集記事戦後リノベーション史は戦後に掲載された改修作品を網羅した点に最も価値がありそう。接客の時代へというタイトルで住宅史が家族と接客の狭間で揺れ動いてきたと藤森さんは指摘するが、これからはいかにネット上で住宅を開くか・閉じるかも考えなきゃならなくなりそう。

 

今月号はテキストに読み応えがあった一方で、作品は現しの既存軸組と特殊な一手の組み合わせというルールの中でのリノベ大喜利みたいな印象を覚える。まだまだ開拓の余地はこれからなのだろう。

 

保育園の家は工場として使われていた既存の加工が軽快。保育園は住宅よりも耐震性に気を使わなきゃいけないと思うのでちょっと心配。工場に家は倉庫(的な)鉄骨蔵の中に木軸を入れ込む構成が延岡の家伊達の家などと共通する。多分2つの外皮に挟まれた中途半端な空間が面白いところだったと思うので、普通に外壁の仕様で納めているのは勿体ない気もした。龍野の文具店みたいに床を減らして軸組を補強して住み継ぐ計画は今後も増え続けるだろうと思う。二本松の農園交流所は農家の改修なのでさらに余った床の処理が問われる。レッドハウスみたいな建て替えまでの繋ぎとしてのプロジェクトも増えている。この計画ではどうせ解体されるからと開き直ることで挑戦的な色使いができているのかな。山と町と庭と家のように唐突に屋外階段を増築する例はSD review 2019 のG町の立体回廊で初めてみた気がする。新築だけど伊達の家もある意味同じかも。西坂部の家は既存と増築の作法が逆転していることで一瞬どこが増築か分からなくなっている。城南の家みたいに敷地内だけでなく周囲の関係も変える可能性は僕も追求してみたい。朝倉の3棟再整備計画は渡り廊下だけで3棟の関係が一新されている。木頭の家は新築当初の屋根形状を復元し、スリットによって小屋裏の足元から光を導いている。狛江の住宅はデッキテラスを増築して駐車場の屋根と屋外リビングを兼用し、庭の盛土により2階と直接行き来できるようにするなど、敷地全体をスキップフロアのように展開している。斜め格子の農家住宅は思いもよらない方法で耐震補強と田の字プランの獲得を両立している。オトヤドイクハはゼンカイハウスばりに補強斜材の存在感があっても良かったりするかもしれない。だぶるすきんの家はかなりアクロバティックなことをしている割には大人しくまとまった印象。改修ならではの建築ができるといいなと思う。